・ラノベの山、あるいは海
12月に発売になるライトノベル新刊の数をざっと数えてみたら、90を超えていた。まあ年末年始のせいか、発売日がズレているレーベルもあるようだけれど。
90という数はどういうものなのか。
メディアミックスでラノベとの関連も深いアニメで言うと、こちらは1クールごとの新作がだいたい30本前後である。しかも1ヶ月ではなく1クール、つまり3ヶ月での数字。そもそもメディアが違うので単純比較できるものでもないが、そう考えてみるとかなり多いのが分かるのではないだろうか。
わざわざそんな風に比べんでも、全部買ったら毎日3冊ずつ読破してぎりぎり1ヶ月内に読みきれる量、と言ったほうがわかりやすい気もするが。
では11月に発売となった新刊の数はと言えば、80にちょっと届かないくらい。11月→12月で10作ほど増加している。
なぜかと言えば、12月から「講談社ラノベ文庫」が新創刊されているからである。80弱でも十分多いっちゅうのにまだ増えるのだ。
そりゃまあどんどん積み本が増えていくのもしょうがないよね。いえ買っただけで満足する僕が悪いんですごめんなさい。
・ライトノベルを網羅する → 不可能?
んでまあ、そんなたくさんあるものを全部買って読むというのは金銭的にも時間的にも物理的にも(収納スペース的な意味で)キツいものがある。そうした我々に制限をかける要素の全てをラノベに費やせるような生活が出来るならまあ可能なのだろうけど、それこそ難しい。出来る人もいるだろうけど、そういう人は例外の側に立っている。
スペースの問題だと、消費者よりむしろ本屋がその90冊の新刊全部を店頭に並べるっていうのが無理じゃないか?
本題とはズレるのだけど、金と時間はともかくスペース的な問題は電子書籍で解決できる(紙の本より安くなれば金銭面の負担も軽くなるかな?)ので、そういう意味では早いとこ普及してもらいたいな。
・「じゃあ何を読めばいいんだよ」「そこで本日おすすめするのがこの、キュレーションです」
いや、「キュレーション」というタイトルのラノベがあるわけではないんだ。すまない。
キュレーションってなんだ?という人に簡単に説明すると、「たくさんの情報の中から価値あるものを拾い上げ、みんなと共有する」ということ。Twitterなどで、Aさんがとあるラノベの感想をツイートしているのを見て、面白そうだし買ってみるか、と思ったことがあるだろう。要はこれがキュレーションである。これをもっと意識的に、積極的にやっていこうということだ。
上記はかなり大雑把な説明である。キュレーションについては、佐々木俊尚氏の『キュレーションの時代』という本が詳しいので、興味があれば読んでいただきたい。ラノベに限らず、ありとあらゆる分野で情報過多とも言える現代社会を生きる僕らにとって、読んでおいて損はない本である。
キュレーションにおいて重要なのは、自分にとって有益なキュレーターを見つけることである。キュレーターとは、上記の例で言うところのAさんのこと。もっとわかりやすい例を挙げてみると、ロリコンの人は同じくロリコンの人が面白いと思う作品なら、同じように面白いと感じる可能性が高いので、そういう人をTwitterで見つけてフォローすれば自分向けの作品を紹介してもらえるかもしれないというわけだ。そして、自分が感想を発信することで、自分が別の誰かにとってのキュレーターになることもある。
面白いライトノベルの情報を得るためには、まずはライトノベルを読み、ライトノベルについて発言している人を探す。そこからさらに、自分好みのジャンルを読んでいる人を探していくという方法を採ることになる。Twitterの場合、ラノベ好きな人は同じくラノベ好きな人をフォローしている、されていることが多いので、そこからも自分に合ったキュレーターを探していくことが出来るだろう。見つけたキュレーターをリストにまとめることで、より効率よく情報を集めていくことが出来る。別にTwitterに限らずとも、ラノベの感想や情報をメインに扱うブログをRSSリーダーに登録するといった方法もある。
・キュレーターとしての『このラノ』
この記事を書いている2011年11月19日は、『このライトノベルがすごい! 2012』の発売日である。僕はその前日に手に入れることができたのだが、それよりさらに早くフラゲした人により2chにランキング結果などが投下され、まとめサイトによって情報が広まった。
上位10位に入った『円環少女』『丘ルトロジック』『アイドライジング!』『雨の日のアイリス』の4作品は知名度が高い作品とは言えず、ランキングの結果に納得がいかないという声もあるようだ。というのもこのランキング、「協力者(作家・評論家・ライター・ライトノベル系イベント関係者・大学サークル・ネットでのライトノベル情報発信者など、ライトノベルに精通していると思われる人々)」「宝島社ホームページ内」「12~18歳の中高生対象のモニター」という3種のアンケートを取っており、そのうち協力者によるアンケートは得点が他2種のプラス5点になっているのである。また、HPアンケートの回答者が桁違いに増えた(協力者65人、モニター103人に対し1434人)ことに対応するため、今年度から「それぞれの得票者数を一定値の母数に揃えてポイントに換算」というように集計方法が改められた。それにより、協力者が持っている票が他2種に比べて大きな力を持つことになったわけだ。
というわけで、HPやモニターのアンケートで票が少なくても、協力者アンケートでの得票が多いと上位に食い込めるというわけである。上記は『円環少女』『丘ルトロジック』『アイドライジング!』『雨の日のアイリス』の各種アンケートでの獲得ポイントを円グラフにしたもの。2chで上位10作品について同様のグラフが作られているので、まとめサイトなどで見た人もいるだろう。
集計方法変更後1回目のランキングということで、この結果をもとに来年度以降により適した形への調整が入る可能性はあるが、今回取り上げたいのは集計方法やランキングの是非ではなく、『このラノ』をキュレーションに上手く活用する方法である。
まずは下の表を見ていただきたい。
わざわざそんな風に比べんでも、全部買ったら毎日3冊ずつ読破してぎりぎり1ヶ月内に読みきれる量、と言ったほうがわかりやすい気もするが。
では11月に発売となった新刊の数はと言えば、80にちょっと届かないくらい。11月→12月で10作ほど増加している。
なぜかと言えば、12月から「講談社ラノベ文庫」が新創刊されているからである。80弱でも十分多いっちゅうのにまだ増えるのだ。
そりゃまあどんどん積み本が増えていくのもしょうがないよね。いえ買っただけで満足する僕が悪いんですごめんなさい。
・ライトノベルを網羅する → 不可能?
んでまあ、そんなたくさんあるものを全部買って読むというのは金銭的にも時間的にも物理的にも(収納スペース的な意味で)キツいものがある。そうした我々に制限をかける要素の全てをラノベに費やせるような生活が出来るならまあ可能なのだろうけど、それこそ難しい。出来る人もいるだろうけど、そういう人は例外の側に立っている。
スペースの問題だと、消費者よりむしろ本屋がその90冊の新刊全部を店頭に並べるっていうのが無理じゃないか?
本題とはズレるのだけど、金と時間はともかくスペース的な問題は電子書籍で解決できる(紙の本より安くなれば金銭面の負担も軽くなるかな?)ので、そういう意味では早いとこ普及してもらいたいな。
・「じゃあ何を読めばいいんだよ」「そこで本日おすすめするのがこの、キュレーションです」
いや、「キュレーション」というタイトルのラノベがあるわけではないんだ。すまない。
キュレーションってなんだ?という人に簡単に説明すると、「たくさんの情報の中から価値あるものを拾い上げ、みんなと共有する」ということ。Twitterなどで、Aさんがとあるラノベの感想をツイートしているのを見て、面白そうだし買ってみるか、と思ったことがあるだろう。要はこれがキュレーションである。これをもっと意識的に、積極的にやっていこうということだ。
上記はかなり大雑把な説明である。キュレーションについては、佐々木俊尚氏の『キュレーションの時代』という本が詳しいので、興味があれば読んでいただきたい。ラノベに限らず、ありとあらゆる分野で情報過多とも言える現代社会を生きる僕らにとって、読んでおいて損はない本である。
キュレーションにおいて重要なのは、自分にとって有益なキュレーターを見つけることである。キュレーターとは、上記の例で言うところのAさんのこと。もっとわかりやすい例を挙げてみると、ロリコンの人は同じくロリコンの人が面白いと思う作品なら、同じように面白いと感じる可能性が高いので、そういう人をTwitterで見つけてフォローすれば自分向けの作品を紹介してもらえるかもしれないというわけだ。そして、自分が感想を発信することで、自分が別の誰かにとってのキュレーターになることもある。
面白いライトノベルの情報を得るためには、まずはライトノベルを読み、ライトノベルについて発言している人を探す。そこからさらに、自分好みのジャンルを読んでいる人を探していくという方法を採ることになる。Twitterの場合、ラノベ好きな人は同じくラノベ好きな人をフォローしている、されていることが多いので、そこからも自分に合ったキュレーターを探していくことが出来るだろう。見つけたキュレーターをリストにまとめることで、より効率よく情報を集めていくことが出来る。別にTwitterに限らずとも、ラノベの感想や情報をメインに扱うブログをRSSリーダーに登録するといった方法もある。
・キュレーターとしての『このラノ』
この記事を書いている2011年11月19日は、『このライトノベルがすごい! 2012』の発売日である。僕はその前日に手に入れることができたのだが、それよりさらに早くフラゲした人により2chにランキング結果などが投下され、まとめサイトによって情報が広まった。
上位10位に入った『円環少女』『丘ルトロジック』『アイドライジング!』『雨の日のアイリス』の4作品は知名度が高い作品とは言えず、ランキングの結果に納得がいかないという声もあるようだ。というのもこのランキング、「協力者(作家・評論家・ライター・ライトノベル系イベント関係者・大学サークル・ネットでのライトノベル情報発信者など、ライトノベルに精通していると思われる人々)」「宝島社ホームページ内」「12~18歳の中高生対象のモニター」という3種のアンケートを取っており、そのうち協力者によるアンケートは得点が他2種のプラス5点になっているのである。また、HPアンケートの回答者が桁違いに増えた(協力者65人、モニター103人に対し1434人)ことに対応するため、今年度から「それぞれの得票者数を一定値の母数に揃えてポイントに換算」というように集計方法が改められた。それにより、協力者が持っている票が他2種に比べて大きな力を持つことになったわけだ。
というわけで、HPやモニターのアンケートで票が少なくても、協力者アンケートでの得票が多いと上位に食い込めるというわけである。上記は『円環少女』『丘ルトロジック』『アイドライジング!』『雨の日のアイリス』の各種アンケートでの獲得ポイントを円グラフにしたもの。2chで上位10作品について同様のグラフが作られているので、まとめサイトなどで見た人もいるだろう。
集計方法変更後1回目のランキングということで、この結果をもとに来年度以降により適した形への調整が入る可能性はあるが、今回取り上げたいのは集計方法やランキングの是非ではなく、『このラノ』をキュレーションに上手く活用する方法である。
まずは下の表を見ていただきたい。
この表は、『このライトノベルがすごい! 2012』51ページに掲載の「2011年度3種アンケートのポイント」をもとに作成した。協力者、HP、モニター3種のアンケート結果(上位60位まで)をそれぞれポイント順に並べたものである。細かく見比べてみれば、三者三様の結果になっていることが分かるだろう。
まず注目したいのは、ライトノベルの本来の読者層と想定されている年齢層である「モニター」の、下位の結果である。半数近くが「0点」となっているのがわかるはずだ。このアンケートは1位に5点、2位に4点、という形(協力者はそこにプラス5点)で5作品まで投票できるため、よほど投票される作品が偏らない限り、0点は早々多くはならないと考えられる。HPでは、アンケート回答者の多さもあってか、0点の作品はひとつも無い。ではどのような作品がポイントを得ているかを見てみると、アニメ化されて知名度の高い作品や、ラノベの中で定番とされるような作品が多い。ここから、0点とされた作品は内容が評価されなかったのではなく、そもそも回答した中高生に読まれていないという可能性が考えられる。読んでいないのなら投票することもない=0点になる、というわけである。HPアンケートについても、上位や下位の結果に似たような傾向が見られる。
この両者のアンケート結果については、上位にいるのは誰もが知っているような作品が多いため、ある程度ラノベを読んでいる人にとっては、キュレーションの効果は薄くなる。もっとも未読の人が「聞いたことあるけど実際どうなの」と情報収集することは十分に有り得るため、皆無というわけではない。むしろラノベを読んだことがない、あまり詳しくない、これから読んでみたいという人にとっては、ラノベの基本や定番が揃っているため、作品選びの良い参考になると言えるだろう。
対して協力者アンケートの結果はどうだろうか。こちらにも0点の作品が10作品あるが、その内7作品がアニメ化され、1作は実写映画化されている。しかも10作のうち3作は、(集計方法の違いがあったとはいえ)過去3年の『このラノ』でBEST5に入っていたほどだ。これはどういうことか。
『このラノ』編集部は、3種のアンケートについて【HP=現在の人気作品】【モニター=中高生が実際に読んでいる作品、定番作品】【協力者=これからの注目作、目立たないが良い作品】に多く票が入ると分析している。HPとモニターについては上の表を見れば、実際にそのような結果が出ていることが分かるはずだ。協力者アンケートの上位10位は、現在アニメ放送中の『ベン・トー』を除けば、全てがアニメ化していない作品である。作品の知名度はメディアミックスに大きく左右されるため、そうした点でこれらの作品は弱いと言える。しかし、「だけど面白い、良い作品だ」と協力者には評価されているというわけだ。
前述したように、協力者はライトノベルに精通していると思われる人々だ。物理的にライトノベル全てを網羅することは難しいとしても、人より多くの作品を読んでいることは確かだろう。そうした人々による、「定番作品、すでに人気のある作品ではなく、これからの注目作や隠れた名作」が重視されたランキングは、ある程度の量ラノベを読んでいる人が、まだ見ぬ面白い作品を探す上での良き手がかりになるだろう。自分の知らない、そして自分にとって有益な情報を提供してくれる人は、まさにキュレーターそのものだと言える。
・ランキングの使い方
ランキングと言うと、「僕の好きなあの作品は何位かな? 5位以内にランクインしているかな?」ということを考えがちだ。実際僕も、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』や『変態王子と笑わない猫。』の順位が気になっていた(『俺妹』は総合11位、『変態王子』は17位だった)。
しかしランキングによって、自分の知らない、読んだことにない面白い作品を見つけることが出来るという見方もある。まさに書名の通り、「このライトノベルがすごい!」と教えてくれるのである。
また、『このラノ』にあるのはランキングだけではない。「目利きが選ぶ! 注目の作家&作品」、「新人賞受賞全作品紹介」「ライトノベルジャンル別ガイド」といったコーナーが設けられ、ランキングに載ったものもそうでないものも、古今東西の様々な作品が紹介されている。また、巻末の「このイベント&サイトがすごい!」から、ライトノベル関連のイベントやサイト(キュレーターに成り得る人々)にアクセスすることも可能だ。
ただ順位を気にするだけでなく、考え方を変えてみて、『このラノ』というキュレーターから新たな作品との出会いを探してみるのはいかがかな?
・おまけ
僕の好きな2作品の得点割合のグラフである。
シリーズ開始から3年以上が経ち、アニメ化もされ、人気作品としてすっかり定着した『俺妹』と、まだ始まって1年ばかりの新作である『変態王子』の違いが見て取れる。集計方法が変わらなければ、協力者票の割合が減り、HP、モニターの票が伸びていくと考えられる。
協力者票が少ないということは、すでに人気作品として定着しているのだと見ることも出来る。ファンとしてはそれは喜ぶべきことなのだろうけど、なんだかんだでやっぱり良い順位は獲ってもらいたくて、複雑なところである。
・参考文献
佐々木俊尚(2011.02.10)『キュレーションの時代 ――「つながり」の情報革命が始まる』ちくま新書
『このライトノベルがすごい!』編集部(2011.12.03)『このライトノベルがすごい! 2012』宝島社
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