というわけで今回は、富士見ファンタジア文庫の『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』をチョイス。発売したばかりの頃に買って、それからずっと読んでなかったんだけども、本屋行ったら2巻が並んでてね。その表紙があんまり可愛いもんだからつい表紙買いしちゃいそうになったんだけど、「ああそういや1巻読んでねぇや」と思い出して。それで読んだんですよ。
ちなみにこれがその可愛い表紙ね。
な!? 可愛いだろ!? 可愛いだろ!?
さあみんなも表紙買いしようぜ!
この作品を知ったのは、とあるライトノベル系まとめブログの記事だった。
あんまり覚えてないけど、確か「俺妹ととらドラを足して2で割った感じ」というようなことが言われていたと思う。僕は『俺妹』も『とらドラ』も好きだったので興味が湧いて買ったというわけ。
で、読んでみてどうだったかというと、上の「俺妹ととらドラを足して2で割った感じ」に即して言うなら、「ゆゆこ節を削ぎ落して、竜児と大河が電柱を蹴っ飛ばさない『とらドラ!』」という感じだった。『俺妹』的な要素は言うほど強くないと思う。強いて言うならヒロインの恋ヶ崎桃が「オタクでない上に兄がいない桐乃」といったところか。
足して2で割る、というのは複数のものからいいとこ取りしているように思える。しかし2で割ったために失われたものも当然あるわけで、その「失われたもの」がさして重要でなかったり無駄な部分だったりするのなら良いのだが、『オタリア』の場合は良いところばかりが消失しているように感じられる。それがつまり、前述の「竜児と大河が電柱を蹴っ飛ばさない『とらドラ!』」という部分である。
ただ、別にそれ自体が悪いというわけではない。元の作品の良いところが消失してようが、その空いた部分にこの作品独自の良いところをぶち込むことが出来れば問題ないし、そういうものこそがオリジナリティとも呼ばれるのだろう。そもそも、「元の作品」とか言ってしまったが、それは読者視点での言葉だ。
ただまあ、その「この作品独自の良いところ」もどうにも薄いのよなぁ。まあ薄いとは言っても個人的には好きな方向性の要素ではあるんだけど。
『とらドラ!』だと、主人公・竜児とヒロイン・大河の関係は竜児曰く「竜と虎」、並び立つもの、傍にい続けるということが言われていた。『オタリア』の主人公・柏田とヒロイン・恋ヶ崎の関係は、そんなに大袈裟ではなくもっと身近な、「友達」というところに落ち着いている。
男女の友情、っていうのは個人的に好きなテーマなんだよね。だから終盤の「あいつは、友達だから」っていう恋ヶ崎の台詞は「おおっ」と思った。2巻以降どうなるかわからんけど、そういうところをきっちり書いてくとか、後々恋愛感情が芽生えちゃったりした時に恋情と友情に揺れるとか、そんな感じになったりしないかなーどうかなー、と思っている。引いては、そこがこの作品のウリになってくといいんじゃないかな、とも。まああくまで僕の願望なのだけど。
たださっきも言ったように、現状だとこの点もどうにも「薄い」。恋ヶ崎はいかにも遊んでそうなギャル系女子な見た目に反して男が苦手(口がきけない、近寄られると硬直する、という程のレベル)で、だから一目惚れした鈴木くんにも全然話しかけられないという娘なのだが、「男が苦手」という女の子に「男友達」が出来るっていうのは、もっと大きな意味があると思う。しかしその割に「男が苦手」な理由が「ずっと女子校で父親以外に男と接する機会が無かったから」で、主人公が大丈夫なのは「ダサメンでオタクで気弱そうだから男として認識できない」というのはどうにもお粗末というか、もったいないんじゃないかなぁ。その辺、もうちょっとドラマが作れそうな設定にしておいても良かったと思うのだけど。
まあ不満を言い出したら、『とらドラ!』で言うところのみのりんと北村に当たるポジションのキャラが微妙だとか、そもそも主人公が微妙だとか、あと文章が淡々としすぎだとか、まあいろいろ目についてしまうところはある。とはいえ続刊でどうなっていくかわからないというのもあるしね。
とりあえず2巻も買おうと思う。
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